『労務事情』2022年6月1日号

連載「数字から読む日本の雇用」第3回

「雇用される精神障害者10万人弱」

　

　本誌には2017年度にも「気になる数字」を1年間連載したことがありますが、その時の最終回（2018年3月号）は「雇用されている精神障害者5万人超」でした。2017年6月時点における民間企業に雇用される精神障害者の数は50,047.5人だったのですが、それからわずか4年で雇用される精神障害者の数はほぼ倍増しました。2021年6月現在の民間企業で雇用される精神障害者の数はは98,053.5人となったのです。2018年4月に精神障害者の雇用義務が施行されたので、これはその成果の数字といってもいいでしょう。

　これは、昨年12月に公表された「令和3年障害者雇用状況の集計結果」によるものです。まず、民間企業に雇用されている障害者数は597,786.0人で、前年より3.4％増えています。その内訳を見ると、身体障害者は は359,067.5人（対前年比0.8％増）、知的障害者は140,665.0人（同4.8％増）、精神障害者は98,053.5人（同11.4％増）で、身体障害者が伸び悩んでいる一方で、特に精神障害者が大きく増加しています。民間の法定雇用率は2021年から2.3％に引き上げられていますが、現在の民間実雇用率はの2.20％となお上昇を続けており、その原動力がほぼ精神障害者雇用にあることは一目瞭然です。

　さて、2018年に露呈した国や地方自治体の障害者雇用率が水増しされていた事件を受けて、公的機関における障害者雇用についても注目が集まっています。機関種別と障害種別でまとめると次のようになります。この数字を足すと、官民の精神障害者雇用は既に113,022.5人に達していることになります。本稿のタイトルも「雇用される精神障害者11万人強」とすべきかも知れません。