過労死は216件と横ばい、過労自殺は883件で急増中

　去る10月11日、厚生労働省は例年通り『令和６年版過労死等防止対策白書』を公表しました。興味深いデータがいっぱい載っていますが、ここでは最も基本的なデータである過労死と過労自殺の労災認定件数の推移を見てみましょう。なお言葉遣いについて注意しておきますが、世間で過労死と呼ばれているのは脳・心臓疾患による労災認定であり、そのうちに死亡事案も含まれますがそうでないのもあります。また過労自殺と呼ばれているのは精神障害による労災認定であり、そのうちに自殺事案も含まれますがそうでないのもあります。

　2001年度から最新の2023年度までの、脳・心臓疾患の支給決定件数とそのうちの死亡件数、精神障害の支給決定件数とそのうち自殺件数の推移を折れ線グラフに変えて示すと下図のようになります。これをみると、過労死は2000年代に400件に迫り、そのうち死亡も150件前後に達していましたが、2010年代以後じわじわと下がり続け、最近は200件前後、死亡も50件台に下がっていたこと、これに対し過労自殺の方はこの20年余りの間ほぼ一本調子で上昇を続けており、ただそのうち自殺は若干増えた程度であることがわかります。

　最新の2023年度には、過労死事案が216件と4年ぶりに200件を超えましたが、2000年代に比べればまだ低いのに対し、過労自殺事案は883件とますます急増を続けています。労働時間などフィジカル面の労働環境は改善してきているものの、ハラスメントなどメンタル面の労働環境はまだ悪化を続けていることを示しているのでしょうか？